|
私は美瑛町でレストランの仕事を始めて四年目になりますが、高橋さんが選ばれたという事は非常に嬉しく思っています。何でもない当たり前のことを当たり前のように続けている高橋さんのような人に光が当たるという事はすごく嬉しい事ですし、有難いことだと思います。
高橋さんは朝、陽が出たら畑に出て、陽が落ちたら家に戻って来る毎日。それで時間が足りないと言いながら、早く陽が昇るのを待って畑に出て、また暗くなったら家に戻るという生活が、これから十月まで毎日続く訳です。そういう生活を見ると、僕ら料理人も同じです。朝八時から夜は十一時頃まで厨房の中です。材料が入ると、それを水洗いし、皮をむき、切り刻んで形を整えておき、お客様に料理して提供する。片付けを終えると、また朝から同じことの繰り返しです。そんな生活を私もやっていまして、淡々と同じことを続けることの中に、実はすごく素晴らしいことがあって、淡々と毎日同じことをやるからこそ、新しいことが発見できるということを、調理場に立って思っていました。
その中で一番大事なのことは素材です。素材が変わることによって、同じ料理でも品質が上がるということを、四十年近く料理人として仕事をする中で、やっと気付いて来ました。その時に、風味という言葉が自分の頭の中に沸いて来まして、風味のある野菜、風味のある山菜でも魚でも、風味のあるものを使って風味のある料理を作りたいと思うようになって来ました。そういう時に高橋さんとの出会いがありました。淡々とやっている中に風味って生まれるのではないか、と高橋さんの所へ行ったときに思いました。肥料も未だに牛の糞を使っています。回りの人からは「何でそんな大変なことをやっているのか」と聞かれるそうです。昔は貧乏で肥料を買えなかったそうで、買えないから自分で作っていた。それを今も続けていると伺い、言葉が適切か判りませんが、周回遅れのトップランナーというのがあるのではないかと思いました。
今回高橋さんが受賞された意義は大きいと思います。光輝く技術があるとか、前向きにやるということも大事ですけれど、それ以上に、あるべきことを淡々とやるということがまずは大事ではないかと思うので、高橋さんの仕事への姿勢が評価されたと思っています。
ちなみに、高橋さんは昼食はいつもジャガイモを食べているそうです。終戦直後ではないのですから、毎日そんなにジャガイモばかり食べてどうするのか…と言いましたら「こんなにうまいものはないだろう」という答えが返って来ました。親兄弟皆がジャガイモ大好きというのですからビックリです。「好きなジャガイモを作って生活できるなんて、こんな幸せなことはないだろう。だから、毎日お昼にジャガイモを食べるのは当たり前のこと」と言っていました。奥さんは「そんなもの私は嫌いだ」と言っていましたが…(笑)。
『小田賞』は素晴らしい賞だと思います。こうして、淡々と生活をしている高橋さんが選ばれたことを私も非常に嬉しく、何か親戚のおじさんがもらうような気分でした。また違う切り口の受賞は一杯あると思います。これも一つの切り口です。今回こういう賞を頂けたことは推薦者として、大変うれしく思っていますし、皆さんに感謝しています。今日はありがとうございました。
|