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北海道の食および食文化の発展に寄与した個人
または団体を顕彰する事業「小田賞」。

任期1年の選考委員の厳選なる審査によって
候補のなかから、小田賞が選ばれます。

第7回目の今年は5月23日
帯広にて贈呈式が行われました。




 第7回 小田賞受賞者 

高橋農園 高橋  晃 様
             美智子様







高橋農園 高橋 晃 様
 私どもは、美瑛町の藤野というところで、4ヘクタールの畑に馬鈴薯や米、そして年間100種類以上の野菜を生産しています。北海道の平均的な作付面積から見ても、小規模な方だと思います。もともとは、水田のみの作付けでしたが、本格的に野菜作りに取り組むようになったのは、約10年前からです。
 ペンションや民宿をしている人たちから「お客さんに地元の野菜を食べさせてあげたいけど、どうしたら手に入れることができるのですか?」という話を聞くようになりました。美瑛を訪れる観光客の方そして、そこで宿を営む方たちのために、美瑛ならではの「おいしい野菜」を作っていきたいと考えるようになりました。

 そんな時、美瑛町役場の呼びかけにより、生産者直売所「丘のまちにこにこ市場実行委員会」を設立し、そのメンバーに加わりました。生産者から消費者にとれたての野菜を直接販売するという試みは成功しました。これまでは、市場や農協の担当者に言われるように、形の良いもの、揃いの良いものを作ってきましたが、消費者の求めるものは、新鮮でおいしいものということが分かり、その要望に応えられるように努力をしてきました。

 私どもの野菜を使って頂いているレストランやペンションの数も増え、野菜の品種も当初20種類ぐらいでしたが、今では100種類まで増えてきました。その中でも中道様との出会いが私たちの野菜作りの考え方を大きく変えました。中道様との出会いは、美瑛町農協が「美瑛選果」という農産物直売所を設立し、中道様がそのレストラン・アスペルジュを運営することになり、そのレストラン向けの野菜作りをお手伝いすることになったことが始まりでした。

 アスペルジュのシェフは、毎朝うちの畑にその日に使う野菜を取りに来ます。実際に野菜を調理するシェフとの毎日のコミュニケーションから教わることも多いです。そして何より、自分の作った野菜がきれいに盛り付けられ、観光客の方に「おいしい」と喜んでいただくことが生産者として何よりの喜びです。

 フランス視察もさせていただきました。特にフランスのあちこちで開催されているマルシェに興味を持ちました。生産者が自ら店頭に立ち、消費者に自らの野菜を説明しながら販売する。その後、美瑛町農協を中心として美瑛版マルシェを開催することとなり、私もそこに参加しました。「物を売る」ということではなく、消費者との意見交換により教えられ、今後の野菜作りの参考となることも多いですし、何より消費者から直接おいしいと評価されることが生産意欲を大きくしてくれます。

 北海道農業は大規模農業でなければ、経営は成り立たないとされていますが、私どもは小規模ながら、おかげさまで生活できるだけに十分な農業経営をさせていただいています。今、農業経営は厳しいと言われていますが、小規模だからこそできる、私たちのような農業の有り方が北海道農業の一つになりうると、今回の受賞を通じて確信いたしました。私たちはもう若くはありませんが、今回の受賞に恥じないようにこの取り組みを続けていきたいと思っています。そして、この取り組みを後世に引き継いでいけるように努力をしていきたい思います。

 私たちはおいしいものを作りたいという思いだけで、当たり前のことだけを続けてきたと思っております。このような、私たちにスポットを当ててくださった、小田豊四郎記念基金に感謝申し上げたいと思います。




高橋農園
(美瑛町藤野第一)
3代目農家。4ヘクタールの畑に馬鈴薯やお米、
そして野菜を生産。日本の農業はストレスを与えないように
過保護なまでに育てるが、高橋農園では野菜本来の力を
引き出すために、敢えて厳しい環境の下で育てている。
冬から春にかけてはハウスで苗を育てるが、路地栽培を徹底。
「自分が食べて美味しいと思わないものは出さない」
という確固たるポリシーを貫く生産者。




選考委員  津田 廣喜様 
 高橋晃さん、美智子さんご夫妻は美瑛町で三代目の農家をやっておられます。高橋さんは三代目にして今までの米作農家から脱皮されて、野菜づくりをされています。それもオリジナリティのある野菜作りに従事されているわけです。旬の良さを生かした野菜づくりを心がけておられるので、美瑛町のレストランやペンションのニーズにピッタリ合ったということで、今大変注目を浴びる存在になられています。レストランのオーナーである中道博シェフも実際に高橋農園の野菜を食べて感激をされたと伺っています。2年前、洞爺湖サミットの食材選びの際にも白羽の矢が立てられました。ウインザーホテル料理顧問の齊藤壽さんの厳しい目からも高く評価され、今やその名声は国際的にも轟きつつあるというわけです。

 実際に美瑛選果に入っているレストラン・アスペルジュは私も行ってみました。メニューに「美瑛の畑20種類の野菜の盛り合わせ」というものがあり、食べてみましたが、大変美味しいものでした。ここでの野菜は全て高橋さんの畑から供給されていて、間違いがないと確信しました。同じ野菜でも5種類もの品種を作っておられる姿勢にも驚きました。
 高橋さんの畑にもお邪魔しました。夜にFAXされた大量の注文書を基に。朝、日が昇る前から畑に出て一つ一つの食材を揃え、レストランの方が来るのを待っているわけです。最盛期になると野菜を取りに来る車が列をなし「高橋さんのところは法事でもあるのか」と言われるくらい車が並ぶそうです。

 畑で採りたてを頂くとトマトの美味しさなどは、他所では味わえない美味しさでありました。普段、東京のスーパーに並んでいるトマトをサラダで食べている身としては別世界のものという気がしました。それくらい美味しいものでした。私も北海道の田舎で育ち、子どもの頃からジャガイモはたくさん食べていますが、あんなに美味しいジャガイモも食べたことはありませんでした。また高校生以来、実に40年振りでグスベリを口にできたのも嬉しい出来事でありました。北海道では子どもの頃から食べ慣れている方も多いと思います。私もふと昔を思い出しました。


 今後は後継者のことが問題になるだろうと思います。美瑛の町にしても、高橋さんのような役割を果たしてくれる人材が必要になると思いますので町の発展維持のためにも、引き継いで下されば有難いと、応援団として密かに念じたい気持ちでおります。改めて高橋様の受賞を御祝い申し上げます。





津田廣喜
1948年、北海道天塩郡幌延町に生まれる。北海道天塩高等学校から
東京大学法学部を経て、1972年大蔵省入省。1977年苫小牧税務署署長。
1978年大蔵省経済協力開発機構日本政府代表部参事官。1998年、大臣官房審議官。
2003年、財務省大臣官房総括審議官。2007年、財務事務次官に就任後、
2008年7月、同退任。2008年より早稲田大学大学院公共経営研究科教授。




推薦者  中道 博様

私は美瑛町でレストランの仕事を始めて四年目になりますが、高橋さんが選ばれたという事は非常に嬉しく思っています。何でもない当たり前のことを当たり前のように続けている高橋さんのような人に光が当たるという事はすごく嬉しい事ですし、有難いことだと思います。

 高橋さんは朝、陽が出たら畑に出て、陽が落ちたら家に戻って来る毎日。それで時間が足りないと言いながら、早く陽が昇るのを待って畑に出て、また暗くなったら家に戻るという生活が、これから十月まで毎日続く訳です。そういう生活を見ると、僕ら料理人も同じです。朝八時から夜は十一時頃まで厨房の中です。材料が入ると、それを水洗いし、皮をむき、切り刻んで形を整えておき、お客様に料理して提供する。片付けを終えると、また朝から同じことの繰り返しです。そんな生活を私もやっていまして、淡々と同じことを続けることの中に、実はすごく素晴らしいことがあって、淡々と毎日同じことをやるからこそ、新しいことが発見できるということを、調理場に立って思っていました。

 その中で一番大事なのことは素材です。素材が変わることによって、同じ料理でも品質が上がるということを、四十年近く料理人として仕事をする中で、やっと気付いて来ました。その時に、風味という言葉が自分の頭の中に沸いて来まして、風味のある野菜、風味のある山菜でも魚でも、風味のあるものを使って風味のある料理を作りたいと思うようになって来ました。そういう時に高橋さんとの出会いがありました。淡々とやっている中に風味って生まれるのではないか、と高橋さんの所へ行ったときに思いました。肥料も未だに牛の糞を使っています。回りの人からは「何でそんな大変なことをやっているのか」と聞かれるそうです。昔は貧乏で肥料を買えなかったそうで、買えないから自分で作っていた。それを今も続けていると伺い、言葉が適切か判りませんが、周回遅れのトップランナーというのがあるのではないかと思いました。


 今回高橋さんが受賞された意義は大きいと思います。光輝く技術があるとか、前向きにやるということも大事ですけれど、それ以上に、あるべきことを淡々とやるということがまずは大事ではないかと思うので、高橋さんの仕事への姿勢が評価されたと思っています。


 ちなみに、高橋さんは昼食はいつもジャガイモを食べているそうです。終戦直後ではないのですから、毎日そんなにジャガイモばかり食べてどうするのか…と言いましたら「こんなにうまいものはないだろう」という答えが返って来ました。親兄弟皆がジャガイモ大好きというのですからビックリです。「好きなジャガイモを作って生活できるなんて、こんな幸せなことはないだろう。だから、毎日お昼にジャガイモを食べるのは当たり前のこと」と言っていました。奥さんは「そんなもの私は嫌いだ」と言っていましたが…(笑)。


 『小田賞』は素晴らしい賞だと思います。こうして、淡々と生活をしている高橋さんが選ばれたことを私も非常に嬉しく、何か親戚のおじさんがもらうような気分でした。また違う切り口の受賞は一杯あると思います。これも一つの切り口です。今回こういう賞を頂けたことは推薦者として、大変うれしく思っていますし、皆さんに感謝しています。今日はありがとうございました。









当基金理事長  小田 豊

今年もお蔭様で小田賞の発表の席を設けることになりました。会員の皆様には一年に一度のことですので、非常にご迷惑のことですが、お付き合いをいただき有難うございます。また、歴代審査委員の皆様にもご出席を賜りまして、非常に晴れがましい思いです。回を重ねると、こんな風になるのかなと思いますし、入場される様子を見ましてワクワクして一人喜んでいる次第です。

 
 私は大学を卒業してから京都に地縁がありまして、現在も年に数回ほど往来がございます。ご存知の通り、京都には京野菜というものがあります。野菜というのは、今でこそ評価の高いものになりつつありますが、京都の方々は時には保存食として野菜を食べておられた時代があります。例えば、堀川ごぼうというものがあります。今は細くなりましたが、私の若い頃は5センチから7センチぐらいの太さの3年もの、という立派なごぼうがありました。最初に植えてから、再び土に横にして戻し栽培するらしいのですが、実際に見たことがないので説得力はありませんが、3年掛かることは事実のようです。太いごぼうを自慢げに持ち出して、田舎者の私に見せて下さったのを思い出します。


 今、日本中が「地産池消」ということに沸き返っている訳ですけれど、私なりに折々に情報を整理して見ますと、「地産地消」も玉石混ざり合っているような気がします。今回、私も高橋さんの畑に寄せて頂きましたけれど、まさに紛れもない、素人が見ても判る「玉」です。というのは、日の出から日没まで労を厭わず汗を流しても、まだ時間が足りないと仰っておられる訳です。今日は、この日のために山ほどの野菜を頂戴しました。贈呈式の後にしっかりと召し上がっていただこうと思いますので、評価は皆様の舌にお任せしたいと思いますが、正に今、「地産池消」のモデルとしてお二方に差し上げることを、NPO会員の一人として喜びたいと思います。 

今後共、NPOにお力添えをお願いしまして、ご挨拶にいたします。
ありがとうございました。








当日の様子


高橋農園さんから採れたてのグリーンアスパラをご用意いただきました。
瑞々しくて立派なアスパラです。

高橋農園さんの野菜を使って「まんま鍋」を召し上がっていただきました。
牛肉とともに、グリーンアスパラ、もやし、インカのめざめ、新玉ねぎ
を。

豚肉とはキャベツ、水菜、もやし、ミニトマトを。つけダレは、そばつゆの様な味付けです。わさびと練り梅で、さっぱりと召し上がっていただきました。

歴代の選考委員の皆様と、歴代受賞者の皆様、そしてそれぞれが持ち寄る自慢の一品が一同に会する贈呈式は、当基金の誇りです。

小田賞に関する情報をまとめた冊子「北」は
今年でVOL.7を数えます。
現在制作中でございます。
当基金会員の方だけでなく、希望者にもお送りいたします。


「もっと詳しく知りたい」「ちょっと読んでみたい」
どうぞご連絡くださいませ。
小田賞に関するお問い合わせは
小田豊四郎記念基金事務局(担当:斉木由紀子)
TEL 0155-37-6666



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